「チロルの挽歌」から男の性質を辿りみる
昭和な時代のドラマに垣間みる男性気質
<主な作中人物>
大手ゼネコンの資材部長の時に会社の汚職事件の罪をかぶり逮捕される。服役中に家族が自殺する。生きる希望を失い彷徨っているところを立石に救われる。
「橘カメラ店」の店主。納布加野敷の商店会長でもある。占いが趣味で街の相談役。
納布加野敷市長。チロリアンワールド建設を推進。納布加野敷を復興させたい情熱と使命感に溢れた人情家かつお節介焼き。
<種村>
市役所地域振興課長。市長と立石のパイプ役。
市側責任者で市長や立石の信頼も厚い。
<榎本>
市役所地域振興課職員、種村の部下。立石の赴任当初、身の回りの世話を担当。
<巌>
「半田牧場」を経営。牧場敷地の一部がチロリアンワールド建設用地となっており、
市に用地買収を要請され頑 なに断り続けていたが。
<真介>
経営の厳しさを現実のことと受け止めて、用地買収に応じていく。
買収に応じない厳に反発していた。
<あらすじ>

舞台は北海道納布加野敷(ぬぷかのしけ)市。以前、炭鉱で賑わった小さな街は今では相次ぐ閉山で過疎化が進んでいる。市長の山縣は、東京にある関東電鉄から資本参加を受けてテーマパーク「チロリアンワールド」の建設を進め、市の活気を取り戻そうとしていた。
関東電鉄の技術部長である立石は、チロリアンワールド建設・運営の責任者として、娘の亜紀を東京に残して北海道に赴任する。その街には以前、立石が自殺を思いとどまらせた菊川と立石の妻・志津江が衣料品店を経営して暮らしていた。菊川と志津江は駆け落ちして行方知らずだった。
立石の赴任を知り、菊川は逃げ回る。偶然顔をあわせたとき、立石は菊川に志津江を取り戻す意思があることを伝える。立石の存在にますます耐えられなくなった菊川は、立石にこの地から出て行ってほしいと頼み込む。一方、志津江に未練を秘める立石は、三人で話し合うことを提案する。志津江も了承するが、事実上の「夫婦」として生活している二人の姿を見て、立石はチロリアンワールドの完成を見ずに職を辞して北海道を去ることを考え始める。そんな立石の本意を察した人情家の山縣市長はチロリアンワールド用地買収の目処がついたことを宴の名目とし、立石や志津江,菊川を交えた話し合いの場を勝手に設定する。その宴の席で出された結論は、意外なものだった。チロリアンワールドと妻への想いに揺れる立石。思いがけず再会した三人の悩みと新たな生活への模索、立石が赴任した理由、チロリアンワールド完成までの苦難と喜び、これらの話を軸に爽やかな夏と厳しい冬の街に暮らす人々の人間模様と時代の変わり目を迎えた街の姿が描かれている。
参照/出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 土曜ドラマ (NHK) > チロルの挽歌
男たちの真理・心理
主人公 立石の性格 男らしさとしての迷路
名優、高倉健は敢えて説明をするまでもなく高倉健である。「らしさ」というものを言葉として表現をするならば「無骨」「不器用」「無口/口下手」「一本気」「仕事一筋」などであろうか。まさに昭和の時代に存在した象徴的な男性像そのものである。今回のドラマでも確かに立石の中にこの高倉健は存在している。しかしここで表出された立石という人物から派生する男らしさは、高倉健の男らしさのイメージとは何か違うものを感じてしまう。脚本は敬愛する山田太一氏。もちろん1992年という時代背景も多分にある。それを踏まえても高倉健を基準とした男らしさの定義のようなものが逆に分からなくなった。登場する名優、その男たちの個性も微妙な濃度で反応し合いながら男らしさの世界観を醸し出している。それら全てが男らしさというものの複雑さ、難解さの表れでもある。
エンディング・・立石(高倉健)の笑顔の根拠はどこにあるのか?
男たちは時代の変化に迎合せざるを得なかった、、、考えさせられる部分は奥深いところに存在する。
Part₋Ⅰ
台詞から垣間みえる時代性と人物気質
前編 再会篇



オープニング 立石の北海道への赴任が決まった。それを菊川が知ることになるのも時間がかからなかった。狼狽する菊川の姿が象徴的なシーンから始まる。北海道に向かう高倉健。飛行機、ローカル線の車内、そのひとり物憂げな姿は立石というよりまさしく高倉健である。
菊川は、立石の赴任が紛れもない現実であるかを確かめために到着したその姿をこっそり遠くから見つめていた。
榎本の運転で出迎えた山縣市長と共に市庁舎へ向かう。
「炭鉱の閉鎖によって7万人いた街から5万人がいなくなった。2万人の税収ではどうにもならない。」とぼやく山縣。町の活性化に向けての夢と希望と不安を語る。そして、反応が薄い立石に対し言葉を投げかける。

「あなたそういう風ですか?」 (はっ・・)
「いやぁ、参った参った・・無口」 (はっ?)
「何を言っても はい! か はっ」
「チロリアンワールドはサービス業です もう少し喋って下さいよ」

世話役の榎本に宿泊するホテルの部屋に案内された立石。
「生麦生米生卵・・
(小さな声で一人つぶやく立石)」。
「喋る練習だよ。確かにサービス業だからなぁ。」
ホテルの窓から洋服屋が見える。そして、その服屋から聞こえてきた声が志津江に似ていることに気付く立石。志津江がこの町にいることをまだ知らないままに。
1つ時代を感じさせるシーンを紹介したい。
庁舎での市長のセリフ。女性秘書を紹介するくだりである。「これっ・・秘書課の藤沢さん!可愛いでっしょ!ははは。」長閑なセリフといったら今の時代では不躾になるだろうが、当の藤沢さんも笑顔で応えている(と思いたい)。
この時代、女性も男性も心地良いそれぞれの居場所があったのではないか。男性本意の見解かも知れないが。
そして菊川が半田に自分の過去を打ち明けるシーンへと続く。
菊川は会社の汚職事件の身代わりとなって実刑3年の刑務所暮らしをしていたこと、その刑期中に女房と息子が死んだこと。出所後、自殺を図ろうとした時に立石に助けられた。電車に飛び込もうとしていたところを車両の点検などをしていた技術課長だった立石に助けられていたのである。

「私を助けたんじゃない、電車が傷つくのを避けたんだ・・って」「少しも恩着せがましいところが無くて、親切にして貰って励まされて・・」
色々と世話をして貰ったその恩人を裏切って、その女房と北海道に逃げてきたことを明かした。
自宅に帰った菊川と志津江の会話。「あの人に会いたくない。俺が一方的に悪い。あの人は終始良い人だった。それを俺が裏切った」と罪の意識に苛まれる菊川。それに対し、逃げずに会うことを望む志津江。

翌日、立石は榎本との会話の中で、洋服屋の2人が菊川であり、逃げた女房の志津江であることを知ることになる。

その晩、立石と志津江は4年ぶりに再会する。立石が宿泊するホテルの部屋。これまでの経緯を話しつつ、菊川を部屋に呼び入れようとする志津江。この時点で立石も菊川と会うことを拒んでいる。
「嫌だぞ!俺は。会いたくない。呼ぶな。来るなと言え」。
「出ていけ。来るなと言え!会うもんか。どうして会わなきゃいけないんだよ!お前も出ていけ。いっちまえ」。
(変わらないんだから・・変わってないんだから)と泣く志津江。
種村と車での移動。
二日酔いになるほど深酒をした市長に気をもむ種村。
市長の心配。「(前任の)神崎さんは熱意があったが、もう関東電鉄はこのプロジェクトに興味をなくし、車両管理一筋の立石さんを赴任させたのでは?と懐疑的になっている」と。

「そんなことはないですよ~私が希望したことで‥」
(立石さんが?ご自分でリゾートの仕事を?)
「ですから会社が興味を失ったということは無いんです。ほんとですよ!」
(これで市長がどれ程ほっとするか・・。
立石さん・・
立石さんいけないんですよ!だまってこー見回すでしょ!(はい)とか(はー)しか言わないでしょ。
何考えてるのかなって頭も色々と回転している・・。
そうですか‥ご自分で希望して来たんですか・・)
「はい」
(だーったらそういうこと歓迎会で言ってくれれば良いんですよ。神崎さんが亡くなって不安がっている時にぶすっとした立石さんがきて、だまーって じろ^じろ^って見回すでしょ。どうしてですか?
いや技術の人がチロリアンなんて何で希望したんですか?
ほらっ、こういう時にペラペラと喋ってくれればこっちは余計なことを考えないんですよ!
どうしてですか?)
「いや・・」
(言わないんですか?えっ。参ったなあ・・)

立石のホテルの部屋 (※志津江のセリフは女性心の全てを言い表している様)
ホテルに志津江がコーヒーを持ってくる。
「余計なことするなよ!つまんない世話やくなよ!!」
(一旦ドアの外に出て‥再度入ってくる)
(コーヒーなんてついでよ。言う事があったからきたのよ!)「なんだ?」
(あの人、たかさん、悪い悪いって一方的に俺が悪いってあなたに会うのを怖がってますけどね)
「当然だろ」
(私はそんなに一方的に悪いと思ってませんからね!それは・・悪いとは思ってるけど・・ただ恐れ入ってばかりではいませんから。・・真面目で仕事ばっかりで女は内を守れとか言っちゃって。ぶすっ、としてて夫婦の会話なんてろくに無かったじゃない。旅行だって何回した?それもこっちが何度も頼んで、やっと腰あげて。男らしいのが自慢でつまんないこと引き受けて部下にいい顔しちゃって。私のことなんか本気で気にしてくれたことなんてあった?あの人は私を大事にしてくれたわよ。お喋りの相手してくれたし、うちにいる女房の悩み分かってくれたし・・私、後悔なんてしてないわ。亜紀には悪いと思うけど私、こうして良かったんだ)と。
ベッドの上の枕を投げつけようとする立石
(あっ、また枕なの。そんなことしかできないの?口で何も言えないの?お前に何ができるって言ってたけど、ここのパートもやったし、ジャガイモ堀りもしたし人参も掘ったし。お店は大半は私でもってるんだから。繁盛させてるんだから。ただふしだらでこんなことになったんじゃないんだから。幸福なんだから)。
「行っちまえ」(それしかいう事がないの?)「行っちまえ」
半田牧場の買収交渉を立石が任せられる。
立石が半田牧場に向かう道中、雪の中で車が立ち往生した菊川と鉢合わせをする。立石の助けを断る菊川。男同士の本音の言葉がぶつかる。
(あなたの人格を揺さぶりたくって奪ったのかも知れない。どうか、ほっといてください)
「それが人の女房をとった男の挨拶か?」
(好きなだけ殴りなさい)
「あんた殴ったってしょうがないよ!」
(そういう風に立派なこと言うのやめて、しょうがないこともやった方がいいですよ。人間ってしょうがないことをしちまうもんじゃないですか)

「すみません、ぐらい言ったらどうだ??」
(すみません・・) <殴る立石>
「この町にいるとは思わなかったよ。俺は一方的に良い人なもんかよ。あいつも言ってたよ、朴念仁で女の気持ちが全然分からないって。俺がこの仕事についたのもサービス業って聞いたからだよ。サービス業につきゃ少しは人間が柔らかくなって女房に逃げられなくなると思ってな。自分が良いなんて思ってないよ。
一生懸命変わってる。変わって女房をあんたから取り返そうと思ってるよ。・・
けっ、助けるかよ!!」
<走り去る立石の車>

後編 旅立ち
半田牧場に土地の売却交渉のため足を運ぶ立石。人情だけで交渉が成立するわけもないことは分かっている。仕事としての使命、その懸命さには揺らぎはない。気の利いた営業トークがあるわけでもない。軽口をたたく半田。お互いが心に空いた穴を隠し持ちながら、暴力という手段を代弁者とする。不器用な2人の男の間に存在する小さな共鳴、その感情の同一性を感じる。

立石のもとを義理父が訪ねる。
「おやじさん、私は今でもしずえに未練があります。俺にも悪いところがあったんで・・
色々改めて・・それでこっちの魅力であいつを取り戻そうと・・思ってます。これでもいろいろ変わろうとしてるんです。だいたい開業すればサービス業が無口じゃやっていけないですから。結構、喋れるようにもなってきたんです。
(本当かい?)
本当ですよ‥親亀の背中に・・・」
人の道を知れ!とメモを残し志津江に会わずに帰る義父。義父を見送った立石、駅に志津江が駆けつける。
「お父さんに知らせるなんて・・・卑怯よ、こんな嫌がらせ・・汚い手を使わないでよ!!親を使うなんて最低。
もう少しマシな人かと思ってたから」
(当然、立石は義父に告げ口をしたわけではない。一方的に誤解した志津江はさらに立石に幻滅する)。
菊川はそんな志津江の状況を半田に報告する。「そうかい・・奥さん、あんたの方に傾いたかい!!」
(はい、どうも、つまんない事ですが)
「そんなことはねえよ・・」
(誰かに何だか聞いて貰いたくって・・)
「そったら自信のないことでどうする?」(しかし一緒に暮らしている人間は不利ですから。日常生活ってもんはどうしても味気ないもので。離れてる方がロマンチックだし)「そゃ違うべさ・・女は目先の動物だ。目の前からいなくなった男は忘れちまう」
(いなくなるんならいいですよ‥適当な距離をおいて、ちらちらいるんです)
「向こうが父親に泣きついた・・哀れな野郎だ」(そういうことする人じゃないと思ってたんですがね・・)
「よっぽどカミさん、恋しいんだろ」

夜、再び半田牧場を訪ねる立石。家の前で家族団欒でバーベキューをしていたが、半田を1人残し家族は早々に家の中に戻っていった。
孤独な老輩の姿。 そこに立石がくる。
「用事もないけど来た。自然に足が向いた」 (まあかけろ。今度は人情かい?)酒を交わしながら、まさに男どうしの会話が始まる。男らしい男・・ケンカの仕方。
今は対立する関係の2人だが、根底に流れている男の流儀には共通性を感じる。
スーパーで志津江と会う立石。「俺はオヤジさんには何にも頼んでないよ!それだけは言っておくよ」
この叫ぶような訴えを女々しさというのか?儚いプライドというのか?縁日で2人を見かける寂しそうな立石。

翌日、菊川が部屋に訪ねてくる。
「お願いです‥実に勝手なことですが・・」(上がんなよ‥食事中だよ!!)「すみません、お休みに。お邪魔します」(何なの?座れよ!)
「昨夜はどうも。夜店で‥挨拶もしないで」(知ってたの?)
「気が付いてた。前にも何度か。この町は狭いから。・・もう私、限界です。たまりません。こんな小さな町にあなたがいて私らがいるっていうのは全く辛くって・・実に勝手なお願いですが東京へ転勤っていうようにはなりませんか?いや、それは・・あのう私たちが出ていけばいいんだけど、店をたたむとこれまでの4年半の苦労が水の泡で。むろん、こんなことをあなたにお願いするなんて、それこそむちゃくちゃです。またしてもあなたに頼るなんて・・。こんなことできた義理じゃない。ですけど・・どうすればいいですかね?」
「ずっとこのまま何年も暮らすんですか?いつあなたに会うかと・・いや会わなくともなんかいつも自分がしたことを責められているようで・・すみません」
(この歳でこっちの希望で東京に戻るなんてできないよ!)
「あなたには技術があるんだし、電車関係の学校・・」(気軽に言うなよ・・)
「失礼ですがあなたにこんなことをお願いする以上は多少の金は・・・」(馬鹿なこというな)
「そういうポストを棒に振ることをお願いするのですから・・十分承知してます」
(一度3人で会うか?!)「ああ・・そりゃいいですけど・・当然そういう事はあるべきだと思いますけど・・」
(俺にだって誇りはある・・いつまでも・・そんな横恋慕なんてしてられないよ。ほんとはもっと3人で会うべきだったんだろうけどこっちだって急いで決めたくないんだよ。だいたい全くの不意打ちじゃないか!いつからお前たちができたか知らんけど・・・・・)
「最後の一線は東京を離れてから・・」
(そんな事は聞きたくないんだよ!こういうことにほんと鈍感だった。不意打ちだった)
(すみません、菊川さんと生きます、、たったそれだけの書置きだぞ。こんな状態がつらいのはあんただけじゃないんだよ)「すみません」(よし、いいだろう。俺は未だあいつのことはあきらめてないけど、3人で会ってどうしてもがそっちといたい、って志津江がいうんならしょうがないよ。俺がこの町を出ていく)「すみません・・」(まだ決まったわけじゃないだろう!!)「もちろんですよ」


「いつ?場所と日時は追って連絡するって。
(むこうが?)こっちさ。
君の都合もあるだろうから決めずに帰ってきた」
(そりゃ定休日の方が良いわね‥)
「明後日かあ・・」
(場所っていったって家か向こうかしかないでしょ・・)
「3人で会いたくないよ。結果は分かってるんだから・・。
改めて合わなくてもいいじゃないか。どうだい立花の会長に間に入ってもらって・・君の気持は変わらないって伝えて貰って離婚届に判を押して貰って・・」(ここから出てってもらう?)
「そりゃ虫がよすぎるか・・」
(会いましょうよ、3人でちゃんと話しましょうよ・・。あの時はどうしても勇気が無くて何も言わずに飛び出したけど・・
一度冷静に3人でちゃんと話したいわ)
「そりゃいいけど・・」
(お風呂は入ったら蓋をして、、って言ってるのに蓋をしないし。「何それ」
人が陳列したのを勝手に並べ替えちゃうし・・ルビーのホステスにチェックのスカート3割引きで売ったでしょ!)
(結果は分かってる!なんて安心した様な事をいうからよ。向こうはね、変わるっていってるのよ・・悪いところ直そうとしないじゃない)


夜、タクシーで移動中の市長が酔いつぶれている立石を見かけ助け出す。
立ち上がった立石が市長に向かって話しだした。
「残念です‥チロリアンの開業を見届けたかった。一身上の都合で・・この地を去ります・・」
困惑している市長。自分の家に泊まらせる。
夕べの会話・・本当ですか?いなくなるなんてひどい!と理由を聞く市長。
一身上の都合とは?服やのおかみさんの件か? そうなんですが・・と問答が続く。
平身低頭の立石「市長さん、すみません。そういうことじゃないんですよ・・」と深く話すことはせず口を閉ざす立石。
要領を得ない市長が菊川宅にいく。服やのおかみさんの件、その真相を問い質すためである。どうしても立石を引き留めたい市長は、離れていく理由を聞き出すためにストレートな問いを投げかけた。やがて意を決した菊川は市長にありのままを打ち明ける。そして3人で話し合う旨を伝えた。



話しは瞬く間に広がり、半田も男気の勢いで市庁舎に乗り込んでくる。
半田曰く「俺はな、どういう事情であれ窮鳥懐に入ればそれをかばう!だ」。
さらに半田の家族までもが市長室を訪れ、土地を手放すことを直訴され従わざるを得なくなる。方や市長の言葉にショックを受けた菊川までもが出ていくと言いだしていた。
それぞれの男たちがそれぞれの男としての正義をぶつけ合う。

立石の元に娘の亜紀が訪ねてきた。仕事のことを話している立石に亜紀は「変わった、しゃべるようになった、、少しサービス業みたいになってきた」と喜んでいる。そんな亜紀に対して、「サービス業は向いてないんだよな!東京へ戻ろうと思って・・」と偽りの言葉で胸の内の苦渋の心境を語った。

用地買収解決の祝いという名目で市長は宴席を設けた。3人の力になりたいという市長のお節介心。当然、求められたわけでもない。
夜、市長と半田、そして商店会長の橘が加わり飲み始めていた。
橘と半田の会話「土地譲るかい?(はい)そうか、よう決心してくれたね・・。(決心なんてもんじゃないです。息子も嫁も女房まで逆らいやがって。みんなして売れ売れって。参ったもんね・・逆らいやがって)。
「時代だよ半田さん。おやじをえばらせてはくれないよ。」



やがて立石と亜紀が現れ、菊川と志津江も種村に呼ばれてやってくる。立石は志津江たちが来ると聞いて帰ろうとするが、市長は第三者の目があった方がいいと引き止めた。市長の仕切りで話し合いが始まる。
『おれが消える!(立石)』『いや私が消えます!・・・私がいなくなります。・・(菊川)』などと志津江の存在を意識することもなく、男2人が男らしく意地を張り合っている。
市長が口を挟む「いい!いいね!いや結論はともかくとして、男がこういう風に譲り合って意地張ってるっていうのは俺は大好きでね」。

そんな男同士の意地の張り合い、痩せ我慢にしびれを切らした志津江が話し始める。
志津江「冗談じゃありません。両方で消えるの!いなくなるの!なんて。私はどうなるんですか?わたしそっちのけで。2人で良い気持ちになって・・
私の気持ちはどうなるんですか?



(恰好つけている2人の男に詰め寄る志津江)「本音でしゃべりましょうよ。恰好つけてたらみんなでがんじがらめになっちゃうでしょ」
「私はこの人が殻に閉じこもって私とほんとに向き合ってくれなかったののが寂しかったの。変わるとか言って変わってないじゃない・・また恰好つけてるじゃない」
(男は‥男はやせ我慢して恰好つけるもんだ)
「そんなの大嫌い! 私の本音を言います。私はここを出ていく気はありません。この土地が好きです。この人も好きで、この人も好きです。あっちかこっちかなんて言わないで、3人ともこの土地で仲良く暮らしていけないでしょうか。若いうちは無理だけど、今なら年甲斐でそういうことやっていけないでしょうか」
「亜紀ちゃんごめんね。娘の前でお母さんいいたいこと言ってるけどほっといたら2人で意地張って、2人でいい恰好していなくなってお母さん1人になっちゃう!」
<ううん良く分かる>
半田はどうしても納得がいかない。
「男がそんな女に鼻づら引き回されるようなことを承服できるわけがない!
3人で仲良く‥馬鹿なことを言うな!いい年をした男がはいはい言えるわけがない。(いい歳をした男だから言えるんじゃないでしょうか。人生格好つけたまま通せるほど、短くないんです。色んな生き方見つけていいんじゃないでしょうか)
「あんたは男を知らん!!!」
ここで市長の鋭い指摘が入る。
【だけど半田さんだって今日家族にやられたじゃないの!みんな出て行けって意地張り通したかい?
みん同じ。思う通りにはいいかないんだ。そうそう男らしくばかりとやってられないんだ】
「この2人は男らしいじゃないか。2人でいまちゃんと意地張ってるじゃないか。本音はつまらないもんだ。本音をおさえてでも誇りを保つのが男ってもんだ」


宴は続き11時を過ぎた。(幻想のシーンが挿入されている)
何やらざわついた音が響いてくる。大勢の炭鉱夫が歩いてくる。
何を訴えるわけでもなく、賑やかであった頃のままの姿で炭鉱夫が行進している。
市長が叫ぶ 「どうしたんだ・・私に何が出来るっていうんだ、、何ができるっていうんだ」
橘「その通りだ 時代が変わったんだ」
このドラマは男の権威失墜など随所に時代の変化というテーマ性が散りばめられている。





開園までそれから10ヶ月の時間がかかった。
チロリアンワールド開園。チロリアンな格好をしている立石(高倉健さん)。
今、志津江は立石と暮らし、菊川の店にパートに出ている。(終)